空を見上げて

【84】 対決ラウンド4(2)

おっさん「組織としてでかくなったし昔とは違うんだよね。管理職として求められることもハードルが高くなるだろうし。」


一応オレも管理職。
それなりに会社に評価されていたのだ。
管理職としてさらに上を目指せと日頃言われてきた。
でもここ数年モチベーションは下がりっぱなしだった。
やる気が起きない。気持ちが高ぶらない。
要は、組織の中で自分がどうあるべきかということを見失っていたんだと思う。


仕事一筋、仕事に全身全霊を傾けるだけの情熱があれば、それは組織の中で生きていけるだろう。
バリバリ仕事して出世すればいいんだ。島耕作みたいに。
でも、もうそんな気力などない。
限りある人生を仕事だけで消費したくない。
いや、仕事は大事だけど、仕事に忙殺される毎日を送ることが楽しいか?
家族も大事だ。家族との時間も大事にしたいんだ。
・・・この会社でこれからもうまくやっていけるのか。
・・・この会社で満足できる人生を送れるのか。


あー、答えでちまったな。

結 論

オ レ は こ の 会 社 に 向 か な い


おっさん
「まあ、まずは病気治すことだな。まずはそれからだよ。治ってから考えればいいんだ。
それからでも充分間に合う。まだ31なんだから。」


的確なアドバイスありがとう、おっさん。
「治ってから考える」の前に「会社辞めて」というセリフ、入るんだね。


カンカンカンカンカンカン(ゴングの音)




もう降参。
まあもともと勝ち目のない対決だったが。
というか始めから対決ですら、ないですから。


うつ独特の被害者意識かもしれない。
おっさんとの会見中、おっさんの言葉の節々に「辞めろ」という言葉が感じられた。
ライトな口調の中にサブリミナル的に埋め込まれた、チクチクする感情を感じ取った。
いや、気のせいかもしれない。自分の中のマイナス思考がそう思わせているだけ?


しかし、気分は不思議と穏やかだった。
会社到着直前まで苦しめられた頭痛、動悸、いやな汗は止んでいた。
おっさんとしゃべったことで何かが吹っ切れた感じがした。
真摯に話を聞いてくれたおっさんの誠実さにも助けられた。チクチク光線はあったが。
爽快感すらあった。久しくなかった感覚に戸惑う。


おっさん「まあ、また連絡してよ。あせんなくていいからさ、しっかり治して」


オレ「はい、お忙しい中ありがとうございました」


会見終了。


手土産をCさんに手渡す。
恐縮しつつ受け取ってくれた。
職場にあいさつしようと思ったがやめた。
悪くない気分のまま引き上げたい。
来たのにあいさつなしかよ、って思われるかもしれないけど、いいや。
もうどう思われてもいいもんね。


おっさんは外まで見送ってくれた。
外はチラホラ雪が舞い落ちている。
雪はだいぶ溶けている。今降っても積もることはもうないだろう。
もう春が近い。
心にも早く春が来ればいいが。
こちとら冬どころか真っ暗闇ですぜ。夜すら明けてないんだ。


おっさん、オレの肩を2回ポンポンと叩く。


おっさん「んじゃな!」


おっさんらしい。
ペコリと頭を下げ後にする。


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【83】 対決ラウンド4(1)

ラウンド4 お題「会社の中のオレ」


カーーーーーーーーン(ゴングの音)


今の職場の状況が気になった。
なにせ最低限の人員で回していた職場だ。
自分が抜けて今頃大変な思いをしていることだろう。
能力うんぬんより誰かが抜けると人手として足りない状況なのだ。
それともすでにオレの後釜が入ってスムーズに仕事してるのか・・


オレ「ところで店は大丈夫なんですか?忙しいでしょう・・?」


おっさん「んー、まあね。これから書き入れ時だしね。人は足りてないね、はっきりいって。」


やっぱりか・・ズーーンとくる。
後釜は入れてないらしい。
4月は入学・就職・新学期シーズンで破壊的に忙しい。
その時期にオレが復帰できる可能性はゼロである。
今までも迷惑かけてこれからもさらに迷惑かけることになるのか・・・


オレ「新プロジェクトは・・?」


おっさん「あっちはもっと大変だよ。人集まらなくてね。こっちの人員回してるところだから」


アルバイトが思うように集まらないらしい。
開店でお客がわんさかきてるのに。大変なんてもんじゃない。
そんな状況でオレが抜けちまったのか・・
再び、ズーーーン。


おっさん「でもなんとかなってるよ。まあ、大丈夫じゃない?」


おっさんの口調は非常にライトだ。
オレへの気遣いが感じられる。
そういう気持ちが汲み取れて、また悪い気がして、ズーーーーン。


おっさん
「まあ、大きくなったもんだよな、この会社も。俺が前の会社で担当してた時は1店しかなかったもんな。それがどんどん規模が大きくなっていって。
社長がイメージしたとおりに大きくなっていったもんなー。」


オレ「そうですね」


おっさん「やっぱあの人はすごいよ。ゼロから築きあげてここまで来てんだから。」


ここで会社のことを少し説明。


この会社は社長が30年前に立ち上げた。
地方都市の小さな一角の一店のみだったのが今では業界では全国的に知られつつある成長企業である。
各地から同業者の視察が絶えず、地元マスコミからも注目されよく取り上げられる。
会社が大きくなったのは社長の手腕によるもの。
経営の才覚はかなりのものである。
数年前の不況下でも順調に業績を伸ばしてきたのだから。


時代の変化・流行を敏感に感じ取りそれに即して戦略はしょっちゅう変わった。
でも戦略の変化は今の会社経営ではなくてはならないものだろう。
今の時代は変化に対応できない者は置いていかれる。
加速度を増す時代の変化についていかないとよっぽどの大企業でない限り生き残れないのだ。
「昔はのんびりしててよかった」とはよくいったもんだ。そのとおり。


社長は常に従業員に高いレベルのスキルを求めた。
ここでいうスキルとは目に見える技術的なものではない。
割と精神論に近い。どんな仕事にも全力で取り組んであきらめるな、みたいな。
全体会議などことあるごとに発破をかけてきた。
カリスマ性がある、と言えばあるのだろう。


下の者たちは社長からの指示・方針がコロコロ変わるのに戸惑った。
戸惑って「やってられるかー!」と辞める人が多かった。
もう、9年間で何人みてきたか。
方針に従っても結局ついていけず、体調を崩して辞めた人もいた。
社長自身、自分の考え方についていけない人間は容赦なく切り捨てた。
たとえ今まで懸命に働いて会社に寄与してきても付いてこれないとそこで終わり。
そういう人たちが辞めていく姿を幾度も目にしてきた。


人の出入りが激しく、重役は外からヘッドハンティングされた人々がほとんど。
彼らが社長のブレーンとなって手となり足となってきた。
彼らは社長の考え方を深く理解しており、方針の変化に柔軟に対応できる。
おっさんもその一人である。


おっさん
「でも社長もここまで来るのにやっぱりそれ相応の苦労はあっただろうし犠牲にしてきたものもあるんだよね。
でも社長である以上社員の生活を支える責任があるからな。会社潰すわけにはいかんだろ。社長は孤独なんだよ。それは俺らが思ってる以上につらく厳しい中を乗り越えてきたんじゃないかな」


うーん、そこまでは考えたことなかったな。
そう言われればそうかも。
んー、でもなー。


つ づ く


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by fumi(ふみ)  at 15:22 |  [5]絶望のウツージン |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

【82】 対決ラウンド3

ユニマットの紙コップコーヒーをすする。
味がしない。つーか味を感じない。
温めた泥水を飲んでる気分だ。
でもあったかい飲み物は幾分心を落ち着かせた。

おっさんは4本目のタバコに火をつけた。



ラウンド3 お題「おっさんの将来」


カーーーーーーーーン(ゴングの音)


おっさん「あれ、今いくつだっけ?」


オレ「31です」


おっさん「31か、てことは定年まであと30年あるんだな」


オレ「そうですね」


おっさん「30年だよ、自分が生きてきた年数分まだ働かなくちゃならないんだ」


オレ「はい」


おっさん「長いよね。ちょうど折り返しだよ」


オレ「はい」


おっさん「おれなんかあと10年ちょっとだもんね。あとちょっとでリタイアさ」


おっさん、なぜか自慢げに話す。
へっへー、いいだろー♪みたいな。


おっさん「俺はね、定年になったら田舎帰るよ」


オレ「へー」


おっさん「田舎帰って畑仕事でもするさ。もうサラリーマンはヤだから」


オレ「あれ、田舎どこでしたっけ?」


おっさん「○○(東北地方の1県)。小さいけど実家に畑持っててね。そこもらって気楽に過ごすよ」


オレ「ふーん」


おっさん
「田舎はいいよおー。やっぱり空気の流れ方が違うよね、都会と。俺なんか入社して東京行ったり地方行ったりいろいろ飛ばされたけど地方は空気もいいしね。メシもうまいし。のんびりしてるじゃん。人もセカセカしてないし。まあ、昔は都会も今ほどセカセカしてなかったんだけどね。いつからこうなっちゃったのか。んふ〜〜〜〜〜(タバコの煙を吐く)」


おっさんはうまそうにタバコを吸う。
くわえたタバコをきゅ〜と吸って、体中の空気を吐き出すように煙を口からんふ〜と逃がす。
んー、オレも吸いたくなった。


おっさん
「ストレスがたまるのは今の世の中になってからだよね。ギスギスしちゃってる。空気がよどんでるもの。田舎もいろいろあるだろうけどね。しがらみとか。でも自分のペースでやれるじゃん。キツかったら休めばいいんだし。だから農業。これからは農業だよ!


いやいや力説せんでも(;´Д`)


おっさん「農業、いいんじゃない?お前もやれば?自然相手だから厳しいけどね。楽ではないな。でも人間関係もぐちゃぐちゃしてないからストレスはそんなにないだろうし」


オレ「はは、いいかもしれないですね」


冗談と受け止めたが、あながち悪くないかもと思った。
農業なめんな、という声もあるかと思いますが。
大変な職業であることは重々承知してます。
でもこの時のおっさんの言葉は妙に説得力があって「いいな」と思ったのです。


おっさん
「俺はあと10年だけどさ、お前はあと30年あるわけだよ。今こんな風になっちゃったけど逆に今で良かったのかもな。いい機会だよ、人生見つめなおすのに。まあ家族もいるから大変だし責任重いけどな。俺はそんなのないからずっと突っ走ってきたけど。」


おっさんは独身である。
いや以前は結婚してたのかもしれない。
その辺の経緯は聞いたことないが少なくとも今は一人身だ。
この会社の重役は以外に独身が多い。40〜50代でも独身というのはザラにいる。
仕事がキツくて家庭を持つドコロではないのもあるだろう。


おっさん
「俺もなー、辞めようと思ったことは何度でもあるけどな。仕事キツいし、ほら、年とると身体にもくるじゃん。まあ酒飲んでウサ晴らして終わってたな。辞めたら田舎帰ろうと思うようになったのは最近だもんな。」


おっさん、遠い目をする。


カンカンカンカン(ゴングの音)


次回、ラウンド4へつづく。


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by fumi(ふみ)  at 06:35 |  [5]絶望のウツージン |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑

【81】 対決ラウンド2(2)

オレ「結局相談して結構スッキリして、解決策も出してくれて辞めないことにしたんですよ」


おっさん「ふむ」


おっさんは腕組みしてオレの話を聞いている。
Cさんがコーヒーを持ってきてくれた。
従業員用の紙コップのコーヒー。
あー、ちょうど飲み物飲みたかったんだ。
緊張してたのと急にしゃべったから喉が渇いてた。
礼を言ってコーヒーをひとくち。


オレ「まあ、そのあと2年くらいその部署にいて異動したわけですけど、その2年間で自分の人生をどうするかってのを結構考えてたんですよね。」


おっさん「うん」


オレ「子供産まれた時期だったので仕事がんばんなきゃって思いましたけど、『一方でこのままでいいのかな?』という思いもあったんです」


おっさん、タバコに火を付ける。シュボッ。


オレ
「そのころから仕事に全力を出せなくなったんです。なんだか仕事が楽しくないなあと。
入社当時あんなに楽しかったのに。意欲が萎えたんですね。」


おっさん「うん」


オレ
「意欲がないからいい仕事できませんよね。直属の上司に色々言われたりしてへこんだり。
この仕事はオレに向いてないんじゃないかと思ったのもこの頃です。漠然と将来に不安を感じるようになりました。」


おっさん「・・そしたら異動、か」


オレ
「はい。本当に辞めようと思って次の仕事就くために資格取ろうか考えてたんですが。異動の話が来て。
辞めるいいタイミングかなと思ったんですけどね。家族もいるし再就職がきついのを考えると、異動して
もう一回頑張ってみるのもアリかなと。」


おっさん「ふむ」


オレ「それで頑張ってみて、結局こうなっちゃった(うつになった)んですけどね・・」


おっさん「・・・」


オレ「要はうつになったのは9年間積もり積もってきたストレスが原因だと思うんです。
厳密にはK市に相談しに行ったあたりからずっと、すごいストレス感じてましたね。」


おっさん
「う〜ん、そうか。まあ人それぞれストレスは抱えてるわな。それとどう折り合いつけるかだもん。結局。」


オレ「今では、『うつになったのも必然的』みたいな感覚がありますね」


おっさん「そうだよね」


カンカンカンカン(ゴングの音)


次、おっさんがしゃべるぞ〜。


ラウンド3に つ づ く


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by fumi(ふみ)  at 07:20 |  [5]絶望のウツージン |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑

【80】 対決ラウンド2(1)

ラウンド2 お題「オレの会社人生」

カーーーーーーーーン(ゴングの音)


オレ
「入社して9年、来月で10年になりますけど、入社した時は仕事が楽しくてしょうがなかったんですよ。
やりがいがあったし好きな仕事でしたから。失敗したり怒られたりしたけどなにくそ!って思えるガッツは当時ありましたね。」


おっさん「うん」


おっさんはオレの顔をまっすぐに見てマジ顔で話を聞いている。
普段はおちゃらけているがマジ話ではきちんと聞く姿勢をとってくれる。
ブラマヨと大違いだ。いや、これが普通なのだが。


オレ「異動になってまたイチから仕事覚えることになったけど楽しかったですよ。仕事量が急に増えたからきつかったですけどね。
すぐ新店の開店準備の仕事も山ほどあったし。」


入社して3年経ち他事業部への異動がありました。昇格もしました。
そのあとすぐ新しい店の開店準備で目まぐるしい忙しさでした。
翌年結婚を控えていたので挙式の準備などで私生活もフル回転。
今思えばよくやったな、と思います。


オレ「結婚もしたし家族ができたから仕事のモチベーション上がりましたよ。」


おっさん「そっか。そのころだもんな、結婚したの」


結婚式ではこのおっさんにスピーチしてもらいました。
内容は忘れましたが。


オレ「それで・・・それから半年くらいたってちょっと店の中で揉めましてね」


おっさん「うん」


オレ「他の社員と対立して孤立しちゃったんですよ」


おっさん「うん」


オレ「それで悩んで、どうしたらいいのか悩んで、当時の上司に相談しにいったんですよ。
その日夜仕事あったけど朝イチで3時間かけてK市まで行って。。
その時は真剣に辞めること考えてました。相談してダメならいいやって感じで」


当時の直属の上司はK市の支店の店長。
そこはオレがいた街から約150キロ離れたところ。
16時から仕事があったので朝6時に家をでて車で3時間かけてK市に行って話をしてきたのです。
その上司(通称マモちゃん)がまたいいキャラなんですわ( ´∀`)
超天然ボケをかましまくって周囲を和ませる陽気なおぢさんです。顔はおてもやん風(^Д^)
でも仕事はきっちりこなす。K市の店の売上を3倍引き上げた脅威のらつ腕。


おっさん「あー、マモちゃんかい?」


オレ「そうそう」


マモちゃん話はかなり面白い逸話があるのですがそれはまた今度。


つづきます。


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by fumi(ふみ)  at 07:25 |  [5]絶望のウツージン |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑

プロフィール

fumi(ふみ)

Author:fumi(ふみ)
32歳元サラリーマン。
北海道札幌市在住。
うつ病で2007年4月退職し現在無職。
うつ継続中。
アルバイトで社会復帰リハビリ中。

このブログは過去の話と現在の話を思いつくままUPしています。初めての方はカテゴリー順に読んでいただくとわかりやすいと思います。過去話は記事タイトルに【】で番号をつけてますので目安にして下さい。

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